2022.04.30
ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法
ピロリ菌の名前を聞いたことがないという人はここ数年で本当に少なくなりました。ピロリ菌自体が日本をはじめとした東アジアに多く、日本人にとっては胃がんとピロリ菌保有は国民病的なところもあり、メディアの露出も非常に多くなっています。また、検診でピロリ菌の検査が胃がん検診として組み込まれていたり、また、中学生などの若年者から検診をして早めに除菌しようとしたりと、早め早めにピロリを退治しようとういう流れも目立つようになっています。
短い外来の際の説明では分かりにくいピロリ菌についての説明をここでさせていただきます。
ピロリ菌とは以下のような病気の原因になります。
- 胃潰瘍や十二指腸潰瘍
- 萎縮性胃炎→胃がん
- 抗血栓療法内服中の胃粘膜障害・出血の発症率の増加
- MALTリンパ腫などの特殊な腫瘍
- 特発性血小板減少など血液の病気
- 原因不明の慢性蕁麻疹
当院におけるピロリ除菌の方針・除菌をお勧めする方
胃カメラをして、ピロリ菌陽性の萎縮性胃炎があると診断されたかたで、
必須
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍の既往のあるかた。
- 胃がんを予防したいと考えているかた。
- 血のつながりのある人が胃がんになったかた。
おすすめ
- 心筋梗塞や脳梗塞などの予防のために抗血栓療法(血液サラサラにする治療)を受けているかた。
治療方法
決められた組み合わせの薬を3種類、1週間内服するだけです。
お薬にアレルギーのない方であれば2次除菌も含めればかなり高率で除菌が成功します。
副作用で下痢や味覚障害などを認める人がいますが、ほとんどの人が軽症で薬を飲み終われば問題なくなります。
除菌治療は保険では2回までしかできませんので、副作用かなと思ったら、自分で判断せずに必ず医療機関に相談してください。
★注意!!
ピロリ菌が引き起こす萎縮性胃炎が進行すればするほど胃がんの発症リスクが上昇します。
個人差はありますが、ピロリ菌に罹患してからの期間が長いほど萎縮性胃炎は進行します。つまり、歳をとればとるほど、胃は萎縮していき、場合によっては不可逆的、もしくは改善まで10年以上を要するような変化が起きます。除菌の効果は若ければ若いほど高いということが言えます。
逆に高齢のかたはピロリ菌を除菌しても胃がんの予防ということに関して、効果は限定的かもしれません。胃がんは予防できることにこしたことはありませんが、予防できない場合でも、早期発見できれば、身体に負担の少ない内視鏡治療(1週間程度の入院)で根治が可能です。萎縮性胃炎のあるかたは年に1回の胃カメラ検査を欠かさないようにしてください。さらにいうと除菌した後に出てくる胃がんは、周囲との境界がわかりづらい、見逃されやすい特徴を持っています。除菌後胃がんやピロリのいない胃にできやすい胃がんもありますので、除菌したからと安心をせずに定期的な検診・検査を受けることが勧められます。