今日、様々な疾患に対して、どこの医療機関でも同じように治療ができるようにガイドラインが示されています。学会などに所属する医師が知恵をしぼって、日本や世界の研究をまとめて作ります。ここでは高血圧のガイドラインを、一般の方にも分かりやすいようにひも解いていきます。

下記アドレスからどなたでもガイドラインは参照できますので興味のあるかたは見てください。
高血圧治療ガイドライン2014
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2014/jsh2014v1_1.pdf
※ 2019年にガイドライン2019が出る予定になっています。

高血圧とは健診等で指摘されることが多く、身近な家族や知り合いでも治療されている方が多い病気ではないでしょうか。血圧自体ではかなり高くならないと症状がでません(頭痛などの高血圧緊急症)。しかし、症状のないような血圧でも放置すると脳梗塞や脳出血、血管性認知症、心筋梗塞、腎不全などに至り、余命を縮めたり、生活の質を損ねてしまったりする危険性を高めてしまいます。血圧が高ければ高いほど死亡リスクが上がることは知っておきましょう。

   目次  下記項目にジャンプできます。
〇 血圧が高いと何が悪い⁉
〇 適切な血圧の目標とは
〇 薬の前にまずは生活習慣の改善を考える
       減塩の工夫、食事(食材)、運動
〇 薬の前に二次性高血圧の可能性を考える
〇 どんな薬があり、どれを飲めばよいのか

 血圧が高いと何が悪い⁉

日本で高血圧は成人の3人に1人、3300-4300万人いると推定されています。高血圧を原因とする死亡者数は年間10万人と推定され、喫煙に次いで多いです(下グラフ参照)。一番は喫煙です。禁煙しましょう。ちなみに糖尿病は4番、飲酒は6番目にきています。昔は適切な治療もなく、脳卒中や心筋梗塞での死亡率が高かったのですが、高血圧に対してしっかり治療(生活習慣の改善や薬物療法)するようになり(下グラフ参照)、特に脳卒中の死亡は著しく減少しました。このことが、日本が世界の中でも長寿の国であることの大きな要因であるとも言われています。高血圧の原因として多いのは塩分のとりすぎです。最近では、肥満に伴う高血圧も増えてきています。肥満の方に多い睡眠時無呼吸症候群により高血圧や脳卒中、心筋梗塞などのリスクがあがることもよく言われているところです。

〇 適切な血圧の目標とは

基準は表の通りですが、要約すると上の血圧が130、下の血圧が85を超えた場合は注意しましょう。測定する度に血圧が140/90を超えるようであれば医療機関で相談しましょう』ということです。

また、高血圧といっても十把一絡げに論じることはできません。例えば糖尿病やコレステロールの高い人では心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がりますので、より慎重な対応が必要です。上の表の中等/低リスクの場合はまずは生活習慣の改善(第一段階)をすることで、血圧の推移をみます。それでも血圧が高い場合は内服治療を開始する(第二段階)ことになります。高リスクに当たる場合は、内服治療と生活習慣の改善を同時に始めます
具体的な高圧目標は下の図の通りになります。

〇 薬の前にまずは生活習慣の改善を考える
                   (高リスクではない場合)
 減塩の工夫、食事(食材)、運動
  血圧が高い⇒では薬を出します  ではダメです!!
 まずは生活習慣を見直しましょう!

❶ 何よりも塩分摂取量が大切。
2011年の国民健康・栄養調査結果では国民一人当たりの塩分摂取量は1日あたり、10.4g(男性11.4g、女性9.4g)となっています。
昔に比べるとかなり減ってはいますが、
高血圧のあるかたの目標値は6gです。
国民全体としても、まだ、頑張る必要・余地があります。

◇◇◇減塩のための工夫◇◇◇
・調味料の工夫
酢やスパイス、すだちやレモン、だしを上手に利用する。
醤油や味噌、ソースは減塩のものを選ぶ。
漬物に醤油をかける、ラーメンのスープを残らず飲み干すなどはやめる。
また炭水化物の重ね食べもよくないです。例 ラーメンライス、やきそばパン
おいしいですけど、好きでもたまに食べるくらいにしましょう。
・塩分の多い食材を避ける。
例としてはハム、ベーコン、かまぼこ、ちくわなどの加工食品
外食や総菜などをよく食べていると塩分摂取はどうしても多くなってしまいます。
あと、米は塩分0ですが、食パンやフランスパンには塩分が以外と多く入っています。

※ 参考までに
このようなレシピもあります。

 

 

❷野菜、果物摂取量を増やす。
バナナやホウレン草、ひじきは塩分の排泄を促進すると言われています。

❸飽和脂肪酸の摂取を控え、不飽和脂肪酸の積極的摂取を心がける。
ポイント いい脂肪と悪い脂肪の見分け方
冷蔵庫に入れて、固まるか固まらないか。

 

 

 

日本心臓財団HPより引用

❹肥満のある方は減量も非常に有効。食事と運動が重要です。
4kgの減量で血圧が3-4mmHg程度、 下がると言われています。

❺アルコールに関しても、日本酒1合以下程度におさえる。
以前は百薬の長などとも言われていましたが、最近ではアルコールに適量はないといった研究もありました。

❻たばこを吸っている方は禁煙する。
喫煙直後は血圧が上がります。

❼有酸素運動の習慣をもつようにする。
一日歩数の増加が目安。目標は6000-8000歩程度。
時間にすると1日30分以上の有酸素運動をしましょう。
膝が悪い人はプールや自転車など、負担がかからない工夫も大切です。

これらは高血圧だけではなく、他の生活習慣病(糖尿病、コレステロール)でも非常に有効なものです。当院では管理栄養士による栄養指導も行っておりますので、生活習慣病のある方には勧めさせていただいております。

〇 薬の前にまず、二次性高血圧を考える

いろいろな原因がありますが、それぞれに特徴的な症状があります。
睡眠時無呼吸症候群
夜間の無呼吸による心臓への負担に加え、日中の眠気などで血圧が変動します。
早朝・起床時の血圧が高くなるのも特徴です。
体重増加などの肥満に加え、夜間の頻尿、夜間の呼吸苦、早朝の頭痛
肥満がない人でも顎が小さい骨格の特徴などでもなりえます。
集中力の低下、家族からのいびきや呼吸停止の指摘
睡眠ポリグラフィ検査で診断し、持続性陽圧呼吸(CPAP)療法を行うことで症状の改善が得られます。

原発性アルドステロン症
低カリウム血症による脱力、周期性四肢麻痺、多尿
若年、治療抵抗例などでも疑う必要があります。

他、腎血管性高血圧、薬剤性(痛み止めNSAIDs、漢方薬の甘草・ピルなど)、クッシング症候群や甲状腺機能亢進症・低下症、糖尿病腎症などいくつかの疾患があります。

〇 どんな薬があり、どれを飲めばよいのか

治療中の方でもご自身がどんな種類の薬を飲んでいるか把握している人はかなりまれだと思います。
上記のように6系統の薬があり、さらにそれぞれで複数の薬があります。また、ジェネリック薬も多数あります。
1粒に2系統の薬剤が入っている合剤なんてものもあります。
1剤のみの内服で十分な降圧が得られない場合も多く、2-3剤を適切に組み合わせることになります。
中には4剤が必要になる人もいます。
心臓の病気の懸念がない、ほとんどの方は基本的には血圧は数か月をかけて緩徐に降圧し、目標達成を目指します。

例えば、下の表にもありますが、
心疾患:日本人に多い冠攣縮性狭心症の予防にもなるCa拮抗薬
心筋梗塞後にはβ遮断薬
心不全には利尿薬やACE阻害薬
腎疾患、尿蛋白:腎保護作用のあるACE阻害薬やAⅡ受容体拮抗薬
さらにCa拮抗薬と併用
高度の腎機能障害:Ca拮抗薬
糖尿病:ACE阻害薬、AⅡ受容体拮抗薬、Ca拮抗薬、α遮断薬
コントロール不良の場合は利尿薬を併用
高齢者:そもそも目標値も若年より緩徐に設定する。
Ca拮抗薬、ACE阻害薬、AII受容体拮抗薬、少量の利尿薬

このように患者さんの背景などをしっかりとみて、治療薬を決定することになります。